• こもれびスタッフ

○○じしょをみにいこう♪



 状況が落ち着いたかと思いきや、また100人を超える日が続いたりして、まだまだ先が見えない日々が続きますね。


 私は仕事柄、もともと英文資料を読む機会はそれなりにあったのですが、この騒動下、これまで以上にその機会が増えました。いかんせん全世界で同時進行している事態なものですから、「他の国ではどうなっているか」に関する情報が求められる、ということですね。

 その「仕事」というのは、おおまかに言ってしまえば企業会計や監査に関するものでして、例えば以下のWebサイトに掲載される資料を読むことが多いです。



(IASB)

https://www.ifrs.org/


(IAASB)

https://www.iaasb.org/



 チラッとでもご覧いただくとお分かりかと思いますが、これらは主に「会計基準」や「監査基準」に関するもので、文学的な言葉の使われ方をしていたり、アクロバティックな文構造をしていたりする、ということは基本的にはありません。その意味で、比較的理解しやすい文章だと言えるでしょう。

 ただ、そこで使われている、いわゆる「専門用語」にどのような訳語を当てるか、これが厄介だったりします。


 例えば、(これを書いている)7月3日時点で https://www.ifrs.org/ の「ニュース」欄のトップにある記事、"Forthcoming third webinar on Exposure Draft General Presentation and Disclosures"を見てみると、1段落目の最後に"the statement of profit and loss"という用語があります。

 この用語を訳すにあたって、一語ずつ英和辞書を引き、それぞれの語について辞書の冒頭に出ている用例をつなぎ合わせて「利益と損失のステートメント(声明?)」などと訳しても、なんのことやらさっぱりです。これは、日本語では「損益計算書」と呼ばれているもので、まぁその名の通り、企業の一定期間における収益と費用を表す財務諸表の一つです。つまり、これは「損益計算書」と訳さなければ、日本で実務をしている人にはピンと来ません(今さら気づいたのですが、英語と日本語で「利益」と「損失」の順番が逆転していますね)。


 この仕事を始めたばかりの頃はそんなことばかりで、こうした「業界ならではの訳語」に悩まされたものでした。


 そんなある日、書店でたまたま見つけたのが山田昭広(著)『英文会計用語辞典』(中央経済社)。1996年の第1版刊行以来、2017年には第4版が出ています。

 これを引くと、たちどころに「ならでは訳語」にたどり着くことができるのです。もちろん、すぐに辞書を引いてしまうことは必ずしも良いことではありませんが、正確性とある程度のスピードが求められる場面では、時にはこうしたショートカットも必要だと自分に言い聞かせています。


 そんなわけで、すっかりこの辞書は「座右の一冊」となったのでした。資料を読んでいてわからない単語が出てくると、ちょっと考えて、それでもわからなければインターネット上の辞書(一般の英和辞典)を引き、それでもなおしっくり来なければこの辞書を引く、というのが定例化しています。「かいけいじしょ~をみにいこう♪」状態です。


  とは言え時々は反省して、あまりに辞書に頼ってばかりいてもいけない、と立ち止まってみることもあります。そして気づくのは、「専門用語をつくるときも、(おそらくは)元々存在する語が持っている意味を最大限膨らませてみて、合致しそうなものを持ってくる、ということをしているのだろうな」、ということです。

 これまた例えば、動詞"impair"(減じる、損なう、害する、傷つける)の名詞形である"impairment"という用語があります。これは会計用語では「減じること」ではなく「減損」(会計帳簿上で行う処理のうちの一つ)と訳します。動詞の意味として挙げたはじめの2つをくっつけると「減損」になることも考え合わせると、会計用語としてこの言葉を開発するときに、「"impair"の名詞形なら、この処理のことを言い表せるぞ!」と考えられたのではないか、と想像する次第です(この点、日本語では「減損」というそれ専用の言葉を用意したのとは発想が異なりますね)。


 そう考えると、もともとの言葉の意味がどのように解釈され、膨らまされたのか、その軌跡を想像してみるのは楽しいかもしれません。


 以下、いくつか余談をば。


【余談①】

 先日こもれびで、英語で書かれた理科の問題と格闘している方がいらっしゃいました。その方とこもれび講師とのやりとりを聞くともなしに聞いていると、"base"は「塩基」だと言うではありませんか。理科の用語も会計の用語と同じで、既存の言葉をうまく使っているのですね。


【余談②】

 会計英語の観点で言うと、"revenue"も"gain"も"income"も、日本語にするとみな「収益」になってしまう、という問題があったりします。英語から日本語にするときはまだしも、その逆をする場合、はたしてそれが"revenue"なのか"gain"なのか"income"なのか、よくよく考える必要があり、これまた厄介です。


【余談③】

 冒頭に挙げたIASBのWebサイトのニュース欄に、"Forthcoming webinar in French on Discussion Paper Business Combinations — Disclosures, Goodwill and Impairment"という記事があります。このページの下の方には、同ページの上に書いてある英語と同じことがフランス語で書かれているので、たいへんお勉強になります。webinarを見ればリスニングの勉強もできるので、一石二鳥です。

 ところで"webinar"という単語はまだまだ日本語にはなりきっていませんね(時々「ウェビナー」という表記を目にすることはありますが)。「ブログ」ももともとは"weblog"だったので、これも"binar"になって、日本では「ビナー」と呼ばれたりする日が来るかも…。


【余談④】

 「IASB」と「IAASB」、両者の名称はとてもよく似ています。前者は"International Accounting Standards Board"、後者は"International Auditing and Assurance Standards Board"なので、そもそもの正式名称からして重複する部分が多いです。

 特に日本でこの名称を口頭で言うとき、"A"は「エー」と読まれがちなので、ともすればどちらも「あいえー(ー)えすびー」と聞こえてしまいます。

 困った先人はどうしたか。ずばり、前者はそのまま「あいえーえすびー」とし、後者を「あいだぶるえーえすびー」と呼ぶことにしたのです。この呼称は日本だけのものなのか世界共通のものなのかは寡聞にして存じませんが、はじめて聞いたときにはおもしろいなぁ、と思ったものです。

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