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狂う遠近法



 こんにちは、こもれびの秋本です。

 2020年が明けましたね。今年もどうぞよろしくお願いします。


 さて、新年第一回のブログ、何を書こうかなぁ…と考えていたのですが、昨年行った、とあるカラオケでの出来事から始めたいと思います。

 私と同じく中島みゆきを聴く方、仮にSさんとしましょう、Sさんとのカラオケでして、会の趣旨は「中島みゆきを歌う会」でした。


 1曲目はSさんから、「アザミ嬢のララバイ」(1975年)。デビューシングルです。良いですねぇ。ちなみについ先日、Amazon Musicで中島みゆきの一部楽曲の配信が始まったのですが、こちらの曲はリストにありますのでよろしければ。

 私が入れた1曲めは「世迷い言」(1975年)。日吉ミミさんに提供した楽曲で、作詞は阿久悠氏。「ヨノナカバカナノヨ」という回文があったためのチョイスでした。


 何曲か進むうちにSさんが入れたのが「あぶな坂」(1976年)。これは、1stアルバム「私の声が聞こえますか」の1曲めの楽曲です。歌詞へのリンクを貼っておきます。


 http://miyuki-lab.jp/disco/lyric/ba014.shtml


 1作目のアルバムの1曲というある意味象徴的な曲ですが、そこで描かれるのはなんとも不思議な世界。その不思議感がサウンドと相まって聴いているとぽや~っとしてくる、これまた好きな曲です。


 そのような印象を抱いているものですから、気づけばついSさんに「この曲って幻想文学っぽいですよね」と口走っていました。そう、Sさんは幻想文学もお好きなのです。

 

 「あ~、幻想文学って遠近法狂いますからね~。」


 遠近法が狂う!なんて言い得て妙なのでしょう。その場では「なるほど~」くらいの思いでいたのが、家に帰ってからどんどんと気分が高揚してきたのでした。

 私なりの感覚で改めて捉え直してみると、「遠近法が狂う」とは「カメラが自在に動き回る」ということ。例えば「あぶな坂」の3番の歌詞を引用してみると


  今日も坂は だれかの痛みで

  紅く 染まっている (①)

  紅い花に 魅かれて だれかが

  今日も ころげ落ちる (②)

     おまえの服が あんまり紅い

     この目を くらませる (③)

  遠いかなたから あたしの黒い喪服を

  目印にしてたのが ここからは見える (④)


 ①と②のカメラは、坂の比較的近くではあるのですが、かといって近すぎず、ほどよく離れた位置。かと思うと③のカメラは、(この歌の主人公である「あたし」は、「あぶな坂を越えたところ」に住んでいるのですが)「あたし」にグッと寄っていき、④では「遠いかなた」から来る「おまえ」に焦点を当てつつカメラ自体は「ここ」にあると、急に望遠レンズを使ったような描写になっています。まさに自由自在。


 安部公房などを読んでいても思うのですが(安部公房の作品を「幻想文学」に分類することの是非は私には判断しかねる上に、「幻想文学」と一口に言っても様々な種類があるのは承知の上ですが)、なんの状況説明もなしに、いきなり超接写から始まるイメージがあります。小説によっては、舞台設定や人間関係の説明(遠景)から始まって、だんだんと具体的な事象(近景)に入っていきますが、幻想文学は初っ端からその状況に放り込まれます。状況から出発して、「あ、これはこういう世界なんだな」といわば帰納的に理解することになります。その分、想像力を使うことになりますが。


 よく考えてみると、私たちが生きるこの現実だって常にカメラは規則正しく動くわけではなく、あちこちに飛んでみたり、急にズームインしたりします。その意味では、幻想文学とは現実の写し鏡なのかもしれませんね。

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