• こもれびスタッフ

曲がり角遍歴


この前、まっすぐのびる道を歩きながら、ふと「私は角を曲がるのが好きだなぁ」と曲がり角のことを考えていて、記憶に残っている角を思い起こしてみた。


さかのぼってみると、私と曲がり角の最初の思い出は小学校一年生のときのこと。

転校してきて2日目、私は早速、下校時にひとりぼっちになり、迷子になった。

馴染めなくて仲間はずれにされたというわけではない(と信じたい)。先生に呼び止められて諸々のプリントを受け取っている間に、同じ方面に帰る友達がみんな先に帰ってしまっていたのだ。

ひとりだけど昨日通った道を歩けばいいだけのことだから大丈夫、と思っていたのに、学校を出てすぐ、最初に曲がるべき角がどこだったか早速わからなくなった。

転校初日だった前日は、新しい仲間に興味津々なクラスメイトたちが、全然違う方向に家がある子も含めて何人もついてきて、同じアパートに住んでいる子も一緒だったから、わいわい楽しく帰ったのだが、肝心の私は下校する道をちゃんと把握していなかったのだ。


帰り道がまっすぐな一本道ならよかったのに、曲がり角、それも似たような景色をした曲がり角が次々と現れる道を曲がらなければいけないのだった。

さて、どこで曲がるんだっけ。ここは昨日見た景色のような気がするけど、一つ先の角だったような気もしてきた…としばらく行ったり来たりした。

けれど、横に行ったり来たりすればするほどに迷い、前にも後ろにも進めなくて、自力ではもう一生帰れないと悟った。

…どうしよう、これは迷子ってやつだ。誰かに助けてもらおう。

快く助けてくれる優しそうな人に声をかけようと、小学一年生なりの目で見極めて、何人かの通行人を半泣きで見送った。

そうして、やっとのことで声をかけたのは、たこ焼きを食べながら歩いてきた若者だった。その人はヘッドホンをつけていたから声をかけにくかったはずなのに、当時の私はなぜか、この人なら助けてくれそうだと判断したらしい。「すいません」と声をかけて、ヘッドホンを外してくれたたこ焼きのお兄さんに「迷子になりました」と言った。

お兄さんは私に学校名を尋ねて、学校まで戻ろうと言って一緒に来てくれた。そこから先は記憶が曖昧だけれど、うまく担任の先生に引き継いでくれて、私は先生に連れられて無事に帰宅した。


曲がり度との二番目の思い出も、小学校からの帰り道だ。

曲がり角は迷子のリスクをはらんだ恐ろしい場所だと私の中に刻まれてしまったわけだが、学年が上がるにつれて余裕が出てきて、毎日同じ友達と同じ道を歩いて帰ることに慣れ始めた。

そんなある日、いつもと違う道で帰ってみようと友達が言い出し、違う角で曲がった。その友達はこの角のことをすでに知っていたのか、自信満々で、こっちのほうが近道なんだよ!と言って、渋る私を狭い路地に引っ張った。この道に面した家に住んでいる人しか通らないのではないかとも思える細い道を少し歩いたら、すぐになじみのある道に出てこれた。

つかの間の冒険ではあったけれど、今まで知らなかった道を通って、それでもちゃんと自力で帰って来れたことが嬉しくて、帰宅早々、今日はいつもと違う道を歩いて帰ってきたんだ!と母に報告した。

一緒になって喜んでもらいたかったのに、母にはこっぴどく叱られた。下校中に何かがあっても見つけやすいように、帰り道は通らなきゃいけない道が決まっているのだということを厳しく言われた。今日通ってきた道のほうが近道なんだよ!と言っても聞く耳は持ってもらえず、こんなことなら報告しなければよかったと思った。

もちろん今の私なら母の言っていることは正しいとわかるけれど、当時の私はわかっておらず、それからも時々、母には黙って、「近道」と言われているほうの道を通って下校していた。

ただ、実は、本当に「近道」だったのかというと怪しい。かかる時間はそんなに変わらなかったような気もするけれど、「近道」かどうか、は本当のところどうでもよかったのだ。


それから今に至るまで、数え切れないほどの角を曲がった。数が多すぎて、あの時のあの曲がり角、という特筆すべき曲がり角があまり思い出せないのが少し寂しい。

数が多すぎて、と書いたけれど、きっと他の理由もある。一本脇道に入ると景色がガラッと変わる、その起点になる曲がり角にわくわくするようになったこと、知っている道が増えてきたこと、初めて歩く場所では手に持ったスマートフォンで地図を見ながら歩くようになってしまったこと…。


駅まで最短距離で行くためにまっすぐな大通りを歩きながら、そんなことを考えていた。

目を少し脇にそらしてみると、曲がり角はたくさんある。

今は駅に行くと決めているからまっすぐに進まなければいけないけれど、私はいつだってその気になれば角を曲がれるのだ。私はやっぱり曲がり角にわくわくするけれど、曲がり角の先の景色を想像しながら道をまっすぐ歩くのも悪くないかもしれない。

これからもたくさんの面白い角との出会いを楽しみにしている。




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