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時間がかかる


« C’est le temps que tu as perdu pour ta rose qui fait ta rose si importante. »

「君が君のバラのために費やした時間が、君のバラをそれほど大切にするんだ」


というのはサンテグジュペリ『星の王子さま』にでてくる有名な一節ですが、対象が何であれ自分と何かの関係において「時間」がどれだけ重要かを物語っています。

人との関係はもちろんのこと、形の有無にかかわらずモノとの関係を考える上でも「時間」を忘れるわけにはいきません。


形のないもの、といったらすぐに言葉を連想するのは僕だけじゃないはず。


先日のイベント(2月20日、「こもれびより Vol.15 黒田龍之助先生に聞く 語学にまつわるちょっとの我慢」を開催しました)でご紹介した『語学はやり直せる!』(2008、角川書店)の中で黒田先生もこう述べられています。


「とにかく時間がかかる。それも、一ヵ月とか二ヵ月なんてもんじゃない。一年や二年でも足りない。もっともっと。

 わたしの場合、振り返ってみれば、だいたい十年くらいやめないで一つの言語と付き合っていると、その全体像がなんとなく見えてくる気がする。しっかり自分の中に根ざしたなあと感じるまでには、さらに十年かかる」(p.50)


僕なんて、いちばん長く付き合っているはずのフランス語でさえまだ十年も経っていないので、やっと全体像の輪郭が見えてきたくらいなのかもしれない。十年後、僕の中のフランス語はどうなっているだろう。


先月のブログでは、フィンランド語の勉強を始めた、ということを綴ってみた。あまり長続きしなかったイタリア語や韓国語のようにならない保証もないが、昨日ようやっと芬和辞書も買って意気込みは十分である。



この間、たまたまフィンランド語で「図書館」ってなんて言うんだろう?と気になった。便利な時代で、Google で「フィンランド語 図書館」と検索するとすぐに kirjasto と出てくる。キルヤスト、と読むのか。ふむふむ。

けれど、もっと大きな収穫があった。検索結果のページをスクロールすると、どうやらこの kirjasto について説明してくれていそうなページを発見。タイトルはずばり「フィンランド語学習記 vol.35 − 本が集まれば図書館になる」、さっそく読んでみた。


〝 kirja(本)

⇒ kirjasto(図書館)

先生曰く、kirjasto の[-sto]は「〜が集まったところ」という意味なのだそうです。

「本が集まったところ=図書館」という成り立ちなのですね。これは納得。〟


なるほどたしかに、納得。[-sto] のような接尾辞はフランス語にはないけど、何かと便利そうだなぁと思っているとあることに気付いた。

まず、この「フィンランド語学習記 Vol.35」が書かれた日付。2013年2月17日、となっている。そして下の方を見てみると、「最近の投稿」のいちばん上には「フィンランド語学習記 Vol.830」 とある。830… !? 文字通り “桁違い” である。ちなみにこちらが書かれたのは2019年10月28日。どうやらそれ以降の更新はない模様。


ここまで来ると気になって、「Vol.1」を探してみた。

見つけた……「フィンランド語学習記 vol.1 − どの言語を選ぶのか」、日付は2012年10月1日。

2012年。僕は当時まだ大学一年生で、たしか7月にフランス語の独学を始めたばかりの頃だ。

このブログの筆者の方は、僕が正銘正銘の語学初心者だった頃から、そのあと留学に行って戻って紆余曲折あって東京外大に編入して、そこでの出会いがきっかけで「こもれび」を始め、国分寺に根を下ろして隔月でのイベントが定着してくるまでの間ずっと、この「フィンランド語学習記」を書き綴っていたことになる。


普通、語学は自分だけのものだ。自分が学んだ過程、そこに費やした時間は自分の中に蓄積されはしても、それが他人にそのまま共有されることはほとんどない。先生が生徒に、たとえば知識という形で共有することはあっても、それとは本質的に違う。ただ誰か他の人の学びの足跡を “なぞる” という営みは、ありそうでなく、できそうでなかなかできないことだ。

けれど、この方が時間をかけて書いてくれた(という言い方はおかしいけど)ブログを、僕たちは時間をかけて読むことができる。きっと言葉が好きで、楽しんで書いているんだろうなというのが伝わる。彼はまだフィンランド語を勉強しているんだろうか。



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