• こもれびスタッフ

川が剥ける? #会話のない読書会 @fuzkue


ときは/じゅうにがつ。きりは/しゅとして/くらいどがわの/かわぞいにならぶ/せいこうじょや/ぞうせんじょが/だす/けむりから/しょうじていた。かわじたいも/それらから/はいしゅつされる/どくせいの/はいえきに/おせんされていた。ねんぱいの/ひとの/なかには/ずっと/むかしの/ふゆの/あるばん/かわに/ほんとうに/ひが/ついて/えいが/さながらに/かつかざんから/ようがんが/どろどろ/ながれでているみたいに/みえたと/しゅちょうする/ひとも/いた。なつの/あいだ/ごくたまに/あたたかい/てんこうが/つづくと/こどもたちは/ひとおよぎしようと/かわへ/はいっていったが/すると/なんにちか/あとで/かわが/いちまい/むけてしまうのだった。 エリック・マコーマック(著)/柴田元幸(訳)『雲』(2019年、東京創元社)p.25 ただし、ひらがなへの書き換えは引用者による



こんにちは。秋本です。

先日、初台にある「本の読める店」fuzkueさんで開催された「会話のない読書会」に参加してきました。 「読む本」は、エリック・マコーマックによる『雲』(原題:"Cloud")。


http://fuzkue.com/entries/881


実はこの日、読書会の場に訳者の柴田元幸さんがいらっしゃり、マコーマック氏がこの読書会に寄せてくれた手紙、作品中盤にある街の描写、そして第一部の冒頭と3つの朗読を聞かせてくださったのでした。

このブログの冒頭に引いたのは、第一部の冒頭。全部ひらがなにしてしまったので読みにくいと思いますが(すみません)、よろしければちょっと読んでみてください。


~ ~ ~


私自身はこれを、目で読む前に聞きました。つまり、はじめに得た情報は音のみだったわけです。 そのため、とある「勘違い」が起こりました。


先ほどの文、最後のところに「かわ」という言葉が連続していますね。「かわへ/はいっていったが」、「かわが/いちまい/むけてしまう」。この部分を私は、「川へ入っていったが」、「川が一枚剥けてしまう」と理解しました。その前で描かれた「霧」や「毒性の廃液」といった言葉からなにかおどろおどろしい世界を想像し、「川が剥ける」というシュルレアリスム的な発想に至ったのだと思います。


ところが、朗読の後で本を開いて読み始めてすぐ、勘違いに気づきました。 その箇所は、以下のように書かれていたのです。


夏のあいだ、ごくたまに暖かい天候が続くと、子供たちはひと泳ぎしようと川へ入っていったが、すると何日かあとで、皮が一枚剝けてしまうのだった。(同上)


あぁ!「皮」が剥ける!それはそれでちょっとぎょっとする表現なのですが、「川」が剥けるほどのインパクトはありません。


耳で聞くだけだとこういうことも起こりうるよなぁ~という改めての驚きと、自分の発想の在り方に、なんだか面白くなってしまいクスリと笑ったのでした。


※ ※ ※


そして柴田さんの朗読は、大変胸に訴えかけるものがありました。 声の出し方や間の取り方、抑揚の付け方など、聴くものを引き込まずにはいられない技。 特に私の印象に残ったのは、身振りでした。


先ほど「中盤にある街の描写」と書いたのは、主人公がカナダのキャンバルーという街(架空の街でしょうか)にたどり着き、そこのキング・ストリートを歩く場面。歩行者があまりいない、と書いた後にこう続きます。


ただし一組の夫婦は例外だった。陽を浴びて顔を赤く輝かせた男は杖を握っていて、その杖で歩道を憎々しげに突いていた。(同書、p.214)


これを読みながら柴田さんは、本当に「憎々しげに」、見えない杖を握った右手の拳を上下に振っていたのでした。そこにはたしかに小説中に描かれた「男」がいました。すごい。


これまで私は朗読会というものを主催したこともなければ、参加したこともありません。 先日同じくfuzkueさんの読書会で読んだ滝口悠生さんの『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』(2019年、NUMABOOKS)に何度も朗読会の描写が出てきたのですが、なんとなく、「朗読をする人が椅子に座って、声音や抑揚によって聞かせるのかな」というイメージを抱いていたのでした。


http://numabooks.com/yagate/


それが今回、柴田さんのエモーショナルな朗読を聞いて、「朗読、すごい…!」と思いを新たにしたのでした。滝口さんの作品を読んだ時点で「朗読会、やりたい!」と思っていたのが、柴田さんの朗読を聞いてさらに強くそう思うようにもなりました。


そんなわけで、近々朗読会を企画することになりそうです。


※ ※ ※


ところで、マコーマック氏からの手紙。これも、内容・朗読ともに素晴らしいものでした。 ここで内容をつらつら書いてしまうのも…と思っていたところ、fuzkue店主の阿久津さんが配信されているメールマガジンの#057でこの手紙のことが書かれていました。ですので、手紙のことが気になる方はぜひ、メールマガジンの講読を!笑 "ご登録確認後、「ご購読手続き完了のお知らせ」(PayPalからのものとは別です)と「メールマガジン受信ご確認のお願い」のメールをお送りし、それから当月・前月配信分のメールマガジンを送付します。"とありますので、今から登録されても#057はお読みになれると思います。


http://fuzkue.com/entries/595


【追伸】 サムネイル画像は当日の様子の写真。なぜ「TECATE」というメキシコのビールを飲んでいるかというと、『雲』がメキシコのシーンから始まるからです。

52回の閲覧

開校時間

平日 18:00~21:30

所在地

〒185-0012 東京都国分寺市本町2-22-2第一鴨下ビル201

代表者

田邉 優

  • Instagram
  • Facebook Social Icon
  • Twitter Social Icon

​© 2018-2020 語学塾こもれび 

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now